キャッシュレス決済導入にはたくさんのメリットがありますが、キャッシュレス決済の導入には初期費用や運用費用など一定のコストがかかるため、導入にあと一歩踏み出せない方もいるでしょう。
そこで活用したいのが、国や地方自治体が提供する補助金や助成金です。
これらの制度を利用することで、キャッシュレス決済導入にかかる初期投資や一部の費用負担を大幅に軽減することが可能です。
この記事では、キャッシュレス決済導入を検討している事業者の皆様に向けて、2025年に活用できる可能性のある主な補助金・助成金について、それぞれの概要、対象者、対象経費、補助率、補助上限額などを詳しく解説します。
さらに、補助金申請の一般的な流れや、申請時に注意すべき点、そしてどこで最新の補助金情報を集め、どこに相談すれば良いのかについてもご紹介します。
補助金を賢く活用し、キャッシュレス決済導入の参考にしてみてください。
【2025年版】キャッシュレス決済導入に使える主な補助金・助成金
キャッシュレス決済の導入に活用できる補助金・助成金は複数あります。
これらの制度は、事業者のタイプ(中小企業、小規模事業者など)や、導入の目的(業務効率化、販路開拓、インボイス対応、観光客対応など)によって申請できるものが異なります。
こちらでは、キャッシュレス決済導入に関連する可能性のある主な補助金・助成金について、2025年の情報や今後の公募見込みを含めてご紹介します。
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
- 中小企業省力化投資補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 業務改善助成金
- 観光・インバウンド向け補助金
- 地方自治体の独自補助金
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がビジネスの課題解決に向けてITツールを導入する際に申請できる補助金制度です。
業務効率化やDX等に向けたソフトウェア、アプリ、サービス等の導入費用を支援します。ハードウェアも補助対象に含まれることがあります。
IT導入補助金には複数の申請枠があり、キャッシュレス決済導入に直接関連するのは「インボイス枠(インボイス対応類型)」です。
この枠は、2023年10月1日に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応を促進することを目的としており、インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」のいずれか、または複数の機能を有するソフトウェアの導入を支援します。
| 対象者 | 中小企業、個人事業主を含む小規模事業者(申請にあたっては、インボイス制度に対応したソフトウェアを導入することが条件となります) | |
| 対象経費 | ソフトウェア(必須)インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」の機能を持つソフトウェア。キャッシュレス決済に関連するソフトウェアはこの対象となります。 | |
| ハードウェア上記ソフトウェアの使用に資するPC、タブレット、レジ、券売機など。キャッシュレス対応POSレジやモバイルPOSレジなどが含まれます。ただし、ハードウェア単体での導入は対象とならず、ソフトウェアとセットで導入する必要があります。 | ||
| 補助率・補助上限額(インボイス枠・インボイス対応類型の場合) | 補助率はソフトウェアの補助対象経費の金額によって異なります。 | |
| ソフトウェア補助対象経費が50万円以下の場合 | 補助率3/4以内(小規模事業者は4/5以内)補助上限額は50万円です。 | |
| ソフトウェア補助対象経費が50万円超〜350万円以下の場合 | 補助率2/3以内補助上限額は350万円です。この場合、通常は2機能以上のソフトウェア導入が条件となります。ハードウェアの購入費用に対する補助率は1/2以内です。 | |
| PC・タブレット等 | 補助上限額10万円 | |
| レジ・券売機等 | 補助上限額20万円 | |
IT導入補助金の申請には、「IT導入支援事業者」とのパートナーシップを組む必要があります。IT導入支援事業者は、補助金の申請手続きやITツールの選定などをサポートしてくれます。
IT導入補助金2025からは、ITツールの導入後の「活用支援」も対象となります。
IT導入補助金は、単にキャッシュレス決済を導入するだけでなく、インボイス対応や他の業務プロセス(顧客対応、在庫管理、財務管理など)の課題解決と組み合わせることで、より効果的に活用できる可能性があります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、通称ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が行う生産性向上や持続的な賃上げに向けた、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する制度です。
飲食店、小売店、農家など幅広い事業者に利用されています。
キャッシュレス決済端末やキャッシュレス決済に対応したレジの導入も、生産性向上につながる設備投資と認められれば、この補助金の対象となる可能性があります。
特に、新たなサービスの提供に必要な機械装置やシステム構築費が主要な補助対象経費となります。
| 対象者 | 中小企業、小規模事業者(個人事業主を含む)など | |
| 対象経費 | 主要な対象経費は機械装置・システム構築費(原則として必須)これには、機械・装置、工具・器具の購入、制作、借用にかかる経費や、新たなサービスの提供に必要なキャッシュレス対応機器などが含まれます。その他、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費なども補助対象となる枠があります。 | |
| 補助率・補助上限額 | ものづくり補助金には複数の申請枠があり、枠によって補助率や補助上限額が異なります。 | |
| 製品・サービス高付加価値化枠 | 革新的な新製品・新サービス開発による高付加価値化を目指す事業が対象です。補助率は中小企業が1/2、小規模・再生事業者が2/3。補助上限額は750万円~2,500万円です。 | |
| グローバル枠 | 海外事業の実施による国内の生産性向上を目指す事業が対象です。補助率は中小企業が1/2、小規模事業者が2/3。補助上限額は3,000万円~4,000万円です。 | |
| その他の枠 | 回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠などもあります。それぞれの補助率や上限額は枠によって異なります。 | |
ものづくり補助金では、付加価値額の向上や給与支給総額の成長率といった基本要件が問われるため、単にキャッシュレス決済機器を導入するだけでなく、事業全体の生産性向上や付加価値向上にどのように貢献するかを示す事業計画の策定・実行が必須となります。
中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoTやロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援する制度です。
この補助金は、以前の事業再構築補助金の一部を再編する形で登場した比較的新しい制度です。
キャッシュレス決済導入の取り組みとしては、特に飲食店や小売店、サービス業におけるキャッシュレス決済に対応した自動精算機や自動券売機などの導入が、省力化投資としてこの補助金の対象となり得ます。
これらの機器は、顧客対応の省力化や業務効率化に直結するためです。
| 対象者 | 中小企業等常勤従業員がいない事業者も応募可能です。 | |
| 対象経費 | 省力化に資する汎用製品の導入にかかる経費キャッシュレス決済に関連するものでは、自動精算機や自動券売機などが該当しうる例として挙げられています。 | |
| 補助率・補助上限額 | 中小企業省力化投資補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの申請枠が予定されています。 | |
| カタログ注文型 | 事前に登録された製品の中から選択して導入する場合の枠です。補助率は1/2、補助上限額は200万円~1,500万円です。 | |
| 一般型 | カタログに登録されていない製品を導入する場合の枠です。補助率は中小企業が1/2、小規模・再生事業者が2/3。補助上限額は750万円~1億円です。 | |
この補助金は、人手不足の解消や業務の効率化を目的とした設備投資に重点を置いています。
キャッシュレス決済対応機器の中でも、自動化や省力化に特に貢献するものが対象となりやすいと考えられます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う、持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓等の取り組みや、それに併せて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みの経費の一部を補助する制度です。
助成対象となる経費は幅広く、設備や機器に関する費用、PR活動にかかる経費、Web関連の支出などが含まれます。「機械装置費など」も含まれており、販路開拓などと併せて行う業務効率化に必要と認められれば、キャッシュレス決済端末も補助対象となる可能性があります。
| 対象者 | 所定の条件を満たす小規模事業者など(個人事業主を含む)。特定非営利法人も要件を満たせば対象となります。業種ごとに小規模事業者の基準が異なります。 | |
| 対象経費 | 機械装置費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託費、外注費など。販路開拓や業務効率化に資する取り組みに必要な費用が幅広く対象となります。キャッシュレス決済端末の導入費用も、業務効率化の一環として対象となり得ます。 | |
| 補助率・補助上限額 | 小規模事業者持続化補助金には複数の申請枠があります。 | |
| 通常枠 | 補助率2/3補助上限額は50万円です。 | |
| 賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠 | これらの枠では補助率2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4)補助上限額は200万円です。 | |
| インボイス特例 | 適格請求書発行事業者である(または申請までに登録を受ける)事業者には、上記補助上限額に加えて50万円の上乗せがあります。 | |
小規模事業者持続化補助金の申請にあたっては、経営計画書と補助事業計画書を作成する必要があります。また、管轄の商工会・商工会議所から「事業支援計画書(様式4)」の交付を受ける必要があります。
商工会議所からの指導や助言も受けられるため、積極的に活用するとよいでしょう。
申請は原則として電子申請システムで行いますが、郵送での申請も可能な場合があります(郵送の場合は減点調整されることがあります)。
過去には、キャッシュレス対応設備を導入した省人化コインパーキング事業や、コインランドリーのキャッシュレス対応による新規顧客拡充といった事例で活用されています。
業務改善助成金
業務改善助成金は、厚生労働省が管轄する助成金制度で、中小企業・小規模事業者が行う生産性向上に資する設備投資等を行い、かつ、事業場内の最低賃金(事業場で最も低い時間給)を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成するものです。
この助成金の大きな特徴は、最低賃金の引き上げが支給要件となっている点です。
単なる設備投資だけでなく、労働者の賃金引き上げとセットでの取り組みを支援します。
| 対象者 | 中小企業、小規模事業者(個人事業主を含む)申請には、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であることなどの条件があります。 | |
| 対象経費 | 生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等機械設備、コンサルティング導入、人材育成・教育訓練などが含まれます。具体的な活用事例として、パソコン、スマートフォン、タブレット端末、POSレジシステム等の導入が挙げられており、キャッシュレス決済端末の導入も生産性向上に資する設備投資として助成対象となる可能性があります。 | |
| 補助率・補助上限額 | 助成率は、申請する事業場の引き上げ前の最低賃金に応じて異なります。 | |
| 900円未満 | 9/10 | |
| 900円以上950円未満 | 4/5(一定の場合は9/10) | |
| 950円以上 | 3/4(一定の場合は4/5)助成上限額は、賃金の引き上げ幅と対象となる労働者数によって変動し、30万円~600万円です。 | |
業務改善助成金は、賃金引き上げとセットでキャッシュレス決済導入を進めたい場合に有効な制度です。
申請手順は、申請書類の準備・提出、交付決定、機器の注文・契約・支払い、事業実績報告・支給申請書の提出、助成金の受け取り、状況報告、消費税等に係る仕入控除税額報告書の提出、という流れで進みます。
令和7年度も概算要求に盛り込まれており、今後も継続して公募が行われる可能性が高いと考えられます。
観光・インバウンド向け補助金
訪日外国人旅行者の増加に伴い、観光地や関連事業者にとってキャッシュレス決済への対応は喫緊の課題となっています。
政府は、インバウンド需要の拡大や旅行者の利便性・安全性の向上を図るため、観光関連事業者を対象とした複数の補助金制度を提供しており、これらの制度の中でキャッシュレス決済の導入が支援されています。
以下に、キャッシュレス決済導入に関連する主な観光・インバウンド向け補助金をご紹介します。これらの多くは観光庁が所管しています。
| インバウンド受入環境整備高度化事業 | 地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業 | インバウンド安全・安心対策推進事業 | 国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業 | 地域公共交通確保維持改善事業費補助金(MaaSの実装に向けた基盤整備事業) | ||
| 目的 | 訪日外国人旅行者の滞在満足度向上と消費拡大を目指し、特定の観光地域での環境整備を支援します。広域的な環境改善(エリア型整備事業)や、人気観光施設の機能強化(拠点強化事業)があります。 | 観光地再生・高付加価値化に向けた取り組みを後押しし、地域全体の魅力と収益力向上、持続可能な観光地域作りを推進します。 | 観光施設等における非常時対応や、医療機関における訪日外国人旅行者への対応強化を図り、安全・安心な訪日旅行環境を整備します。これにより、滞在時間の増加や消費拡大を目指します。 | 国際競争力の高いスノーリゾート形成を促進し、インバウンド需要を取り込み、地方への誘客を促進します。DMOや協議会等が策定する計画に基づいた取り組みを支援します。 | 様々な移動手段・サービスを組み合わせて提供するMaaS(MobilityasaService)の実装に不可欠な、交通事業者のデジタル化を促進します。 | |
| 対象者 | 自治体、観光DMO(観光地域づくり法人)、民間事業者など。対象地域で事業を実施しており、「高度化計画策定者」に該当する主体が申請できます。 | 地域における相当程度の数の民間事業者等(宿泊施設、観光施設等)。複数の民間事業者が集まり、代表主体を決めて申請する必要があります。 | 民間事業者、地方公共団体、DMOなど。特に「医療機関の訪日外国人患者受入機能強化」については、病院・診療所等を設置または管理する者で、外国人患者を受け入れる医療機関リストに登録されている、または登録の見込みがある者が対象です。 | 形成計画において個別事業の実施主体として記載されている登録DMO、地方公共団体、民間事業者等。 | 公共交通事業者(鉄道事業者、軌道経営者、一般乗合・乗用旅客自動車運送事業者、定期航路事業者など)、地方公共団体、これらを含む協議会。 | |
| 対象経費 | 外国人観光客が快適に旅行できる環境づくりのための費用。観光地の飲食店や小売店、医療機関における多言語対応、先進的な決済環境の整備(キャッシュレス決済環境を含む)、無料公衆無線LAN環境の整備、多言語案内機能の整備などが含まれます。 | 「面的DX化」に関する取り組み。地域における事業者が一体となってDX化に取り組み、キャッシュレス化を含むデジタルツールを導入する費用などが含まれます。特に、地域の複数事業者が一体となってキャッシュレス決済システムを導入し、決済データを地域で共有・活用する取り組みなどが例示されています。機器やシステムの導入費、レンタル・リース費などが対象経費となります。 | 訪日外国人患者受入機能強化のための整備にかかる経費。これには、多言語案内機能の整備、無料公衆無線LAN環境の整備、スタッフ研修などと並んで、キャッシュレス決済環境の整備が含まれます。訪日外国人患者の受け入れを目的としたキャッシュレス決済導入が対象となります。 | 計画に基づく取り組みのうち、「受入環境の整備」に関する経費。これには、多言語対応、Wi-Fi整備、DX対応などと並んで、キャッシュレス対応が含まれます。具体的には、キャッシュレス決済環境の整備経費が補助対象となります。その他、スノーコンテンツ造成、スキー場インフラ整備なども対象となります。 | 地域交通のキャッシュレス決済導入支援事業として、交通系ICカード(全国相互利用可能なもの)やQRコード等によるキャッシュレス決済に必要な機器またはシステムの導入費用等。公共交通事業者による、運賃または料金の決済をキャッシュレス端末で完了できる機器等の導入が対象です。 | |
| 補助率・補助上限額 | エリア型整備事業の場合は補助対象経費の1/2以内。拠点機能強化事業のみを実施する場合は補助対象経費の1/3以内。 | 補助対象経費の1/2以内。補助上限額は5,000万円。 | 補助対象経費の1/2以内。ただし、「災害時等における観光危機管理の強化」は上限500万円です。 | 補助対象経費の1/2以内。 | 補助対象経費の1/3以内。ただし、クラウド型キャッシュレス決済の導入に要する経費については1/2以内。 | |
| 備考 | 令和7年度も予算が計上されており、今後の予算成立を受けて改めて公募が実施される見込みです。 | 令和6年度補正予算で継続実施されており、今後も公募を行う予定です。 | 令和7年度も予算要求に盛り込まれており、継続の可能性があります。 | 令和7年度も当初予算に計上されており、今後の予算成立を受けて公募が実施される見込みです。 | 国土交通省が所管しています。 | |
これらの観光・インバウンド向け補助金は、特に観光地の宿泊施設、飲食店、小売店、交通事業者、医療機関などが訪日外国人旅行者の受け入れ環境を整備する際に活用できます。
地方自治体の独自補助金
国が実施する補助金・助成金だけでなく、各地方自治体(市区町村や都道府県)も独自にキャッシュレス決済の導入支援策を実施していることがあります。
これらの補助金は、「キャッシュレス決済端末導入事業費補助金」などの名称で公募されており、消費者の利便性向上や地域経済の活性化を図ることを目的としています。
| 対象者 | 中小企業者や個人事業主を対象としていることが多いですが、自治体によって異なります。 | |
| 対象経費 | キャッシュレス決済に必要な決済端末や付属機器(パソコン、タブレット、レシートプリンターなど)、新紙幣対応の決済端末(自動券売機、自動つり銭機)、固定利用費などの導入費用の一部を補助する制度が多いです。 | |
| 補助率・補助上限額 | 補助率や補助金額、その他の条件は各自治体によって独自に定められています。例えば、以下の自治体の例が挙げられます。 | |
| 東京都北区 | 「キャッシュレス決済端末等導入支援事業補助金」として、キャッシュレス決済機器は1台あたり補助率10分の10、補助上限額10万円。新紙幣とキャッシュレス併用決済機器は補助率2/3、補助上限額50万円。新紙幣のみ対応決済機器は補助率1/2、補助上限額20万円。 | |
| 熊本県山鹿市 | 「山鹿市キャッシュレス決済導入支援事業補助金」として、キャッシュレス決済に必要な決済端末や付属機器などの導入費用の一部を補助しています。2024年8月31日時点で実施中であることが示されています。 | |
| 大阪府茨木市 | 「JPQR導入促進給付金」として、1店舗あたり30,000円の給付金制度があります。 | |
自治体の補助金制度はすべての自治体が実施しているわけではなく、また内容も異なります。
お住まいや事業所のある自治体がどのような補助金制度を実施しているかは、各自治体のホームページで確認する必要があります。
これらの補助金制度は、導入コストの負担を軽減し、地域内のキャッシュレス化を推進する上で有効な手段です。
キャッシュレス補助金の申請方法
キャッシュレス決済導入に使える補助金や助成金の申請プロセスは、制度によって詳細が異なりますが、一般的に共通する基本的な流れと、いくつかのステップがあります。
補助金を獲得するためには、これらのステップを正確に理解し、計画的に進めましょう。
以下に、キャッシュレス補助金を申請する際の一般的な流れと、各段階で必要となる準備や作業について解説します。
- 申請対象となる補助金を探し、対象要件を確認する
- 申請期間とスケジュールを把握する
- 導入する機器・ITツールを選定する
- 事業計画書を作成する
- 必要な書類(見積書、財務関連書類など)を準備する
- 申請書類を提出する
- 審査結果を待つ
- 交付決定後、機器を導入・支払いを行う
- 実績報告書類を提出する
- 補助金が支給される
1.申請対象となる補助金を探し、対象要件を確認する
最初のステップは、自社の状況や導入したいキャッシュレス決済の種類、導入目的などに合った補助金・助成金を見つけることです。
前述した国や自治体の補助金の中から、自社が対象となる可能性のある制度を特定します。
次に、見つけた補助金の詳細な募集要項や公募要領を必ず確認します。特に以下の点を重点的にチェックしましょう。
| 対象者 | 中小企業、小規模事業者、特定の業種、所在地など、自社が対象要件を満たしているか。 | |
| 対象経費 | キャッシュレス決済端末や関連機器、ソフトウェア、システム導入費用などが補助の対象に含まれているか。 | |
| 補助率・補助上限額 | どの程度の費用が補助されるか。 | |
| 補助金の目的・要件 | キャッシュレス決済導入が、補助金の目的(例:生産性向上、販路開拓、インボイス対応、観光客対応、最低賃金引き上げなど)と合致しているか。 | |
要件を満たしていない場合、申請しても不採択となる可能性が高いです。
2.申請期間とスケジュールを把握する
補助金にはそれぞれ公募期間が定められています。募集期間が終了してしまうと申請できないため、必ず申請期間を確認し、その期間内に全ての申請書類を提出できるよう計画を立てる必要があります。
また、補助金によっては締め切りが前倒しになる可能性もあります。最新の情報は、各補助金の公式ホームページや事務局のお知らせで確認しましょう。
申請から補助金の支給までには、一般的に数ヶ月から1年以上かかることもあります。特にIT導入補助金の場合、交付決定後から入金まで約4ヶ月〜7ヶ月かかるという例も示されています。
補助金の入金時期を踏まえて、導入計画や資金繰りを考える必要があります。
3.導入する機器・ITツールを選定する
IT導入補助金のように、特定のITツールやIT導入支援事業者との連携が必要な制度があります。
この場合、補助金の対象となるITツールや提供事業者はあらかじめ登録されたものに限られているため、市場で購入できるあらゆる機器・ツールが対象となるわけではない点に気を付けましょう。
IT導入補助金を利用する場合は、補助金の公式ホームページで登録されているITツールやIT導入支援事業者を検索し、自社に必要な機能やサービスを提供する事業者・ツールを選定します。IT導入支援事業者と相談しながら、導入するキャッシュレス決済関連のソフトウェアやハードウェアを決定します。
小規模事業者持続化補助金のように、特定の機器やITツールに限定されない場合でも、導入したい機器・ITツールの選定はしなければなりません。見積もりなどを取得し、費用を確認します。
4.事業計画書を作成する
多くの補助金では、事業計画書や経営計画書の提出が求められます。
これは、補助金を使ってどのような事業に取り組み、どのような成果を目指すのかを示す書類です。
事業計画書には、自社の経営状況、キャッシュレス決済導入の目的、導入によってどのように業務効率化や売上向上、生産性向上、販路開拓などが実現できるのか、具体的な取り組み内容、期待される効果などを具体的に記述します。補助金の目的に沿った計画になっているかどうかが、審査における判断基準となります。
小規模事業者持続化補助金では、商工会・商工会議所の指導や助言を受けながら経営計画書と補助事業計画書を作成することをおすすめします。
5.必要な書類(見積書、財務関連書類など)を準備する
補助金の申請には、事業計画書以外にも様々な書類を提出する必要があります。
一般的に必要となる書類の例は以下の通りです。
- 申請書
- 事業計画書/経営計画書
- 見積書(導入する機器やサービスの費用を示すもの)
- 会社の履歴事項全部証明書(法人)、住民票や開業届(個人事業主)など
- 直近の決算書類や確定申告書類など、財務状況を示す書類
- その他、補助金ごとに定められた書類(例:IT導入補助金ではIT導入支援事業者との連携に関する書類、小規模事業者持続化補助金では事業支援計画書など)
必要書類が不十分であったり、提出内容に不備があったりすると、不採択になる可能性があります。
書類作成には時間と手間がかかるため、余裕をもって準備を進めましょう。
6.申請書類を提出する
必要な書類が全て準備できたら、補助金の申請窓口に提出します。
多くの補助金は電子申請システムで提出できます。アカウント取得に時間がかかることがあるため、早めに手続きしておきましょう。
郵送での申請も可能な場合がありますが、電子申請をおすすめしている制度では郵送だと減点されることもあります。また、直接窓口に持参することは不可とされている場合が多いです。
提出方法に関するルールは補助金ごとに異なるため、公募要領で必ず確認してください。
7.審査結果を待つ
申請書類を提出した後、補助金の事務局や所管省庁による審査が行われます。審査では、提出された事業計画の内容や、自社が対象要件を満たしているか、必要書類が揃っているかなどが厳しくチェックされます。
審査期間は補助金の種類や申請時期によって異なりますが、数週間から数ヶ月かかるのが一般的です。この間、特に事業者は行うべきことはありませんが、事務局から問い合わせがある場合もありますので、対応できるようにしておきましょう。
審査に通過すると、「交付決定通知書」が送られてきます。この交付決定があってはじめて、補助事業(キャッシュレス決済導入)を実施することができます。
8.交付決定後、機器を導入・支払いを行う
補助金は、原則として事業者が経費を支払い、その後実績報告を行うことで支給される「後払い」の仕組みです。
そのため、交付決定の連絡を受ける前に、キャッシュレス決済機器の発注や契約、支払いを済ませてしまうと、補助金の対象とならなくなります。
必ず、交付決定通知書を受け取った後に、導入するキャッシュレス決済機器やサービスの注文、契約、支払いを行います。
契約日や支払い日が交付決定日以降である必要があるため、気を付けましょう。
導入した機器やサービスは、事業計画に沿って適切に運用を開始します。
9.実績報告書類を提出する
補助事業(キャッシュレス決済導入)が完了したら、速やかに事業実績報告書を作成し、提出します。
実績報告書には、補助事業の実施内容、かかった費用、導入した機器やサービスの証拠資料(契約書、領収書、写真など)、補助事業の成果などを詳細に記載します。
また、事業によっては、導入後の状況報告や、事業実施効果報告の提出が求められることがあります。
例えば、IT導入補助金では事業実施効果報告が必要となります。実績報告書類の内容に不備があると、補助金の支給が遅れたり、支給額が減額されたりする可能性があります。
必要な書類を漏れなく揃え、正確な情報を記載しましょう。
10.補助金が支給される
提出した実績報告書類が事務局によって確認され、補助事業の完了が認められると、補助金額が確定し、指定した銀行口座に補助金が振り込まれます。
前述の通り、補助金は事業完了後の後払いです。
申請から支給までには一定の時間がかかることを理解し、その間の資金繰りについても計画しておくことが大切です。
キャッシュレス補助金を利用する際の注意点
キャッシュレス決済の導入に補助金や助成金を活用することは、コスト負担を軽減する上で有効ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。
これらの注意点を事前に把握しておくことで、スムーズに補助金を利用し、想定外のトラブルを避けることができます。
- 審査に受からなければならない
- 申請先の予算にも限りがある
- 補助金の受給は後払い
- 交付決定前に購入・契約してはならない
- 対象条件や範囲を確認しておく
- 書類の作成・事務処理は丁寧に
- 受給後にも継続的な使用や報告が必要な場合がある
- 不正受給は絶対ダメ
審査に受からなければならない
補助金・助成金は、税金をもとにした公的な予算で実施されるため、必ず審査が行われます。申請すれば必ず受け取れるというものではありません。
審査では、申請書類の内容、事業計画の妥当性、補助金の目的に沿っているか、対象要件を満たしているかなどが厳しくチェックされます。提出書類に不備があったり、申請内容が要件を満たしていなかったり、事業計画が不明確であったりする場合は、不採択となる可能性が高いです。
補助金の採択率は、制度や時期によって変動します。
審査通過のためには、募集要項を熟読し、要件を正確に満たした上で、補助金の目的に合致した実現可能性の高い事業計画を具体的に記述する必要があります。
申請先の予算にも限りがある
多くの補助金・助成金制度には、あらかじめ予算額が定められています。
公募期間内であっても、申請額が予算の上限に達した場合、公募が早期に終了したり、締め切りが前倒しになったりすることがあります。
人気の高い補助金や予算額が少ない補助金の場合、早期に締め切られる可能性が高いため、申請を検討している場合は、最新の公募状況を確認しつつ、できるだけ早く準備を進めましょう。
再募集が行われることもありますが、必ずしも保証されているわけではありません。
補助金の受給は後払い
補助金や助成金は原則として「後払い」です。申請後に計画を実施し、その成果を報告した上で支給されるものだと認識しておきましょう。
つまり、キャッシュレス決済の導入にかかる費用は、いったん事業者が全額自己資金で支払い、補助金の支給はその後になります。
申請から補助金が振り込まれるまでには、数ヶ月から1年以上かかることもあるため、その間の資金繰りを十分に考慮しておく必要があります。
自己資金が不足している場合、補助金の入金を待たずに事業を実施することが困難になる可能性もあります。
交付決定前に購入・契約してはならない
補助金の申請において、注意点の一つが、「交付決定前に補助事業の対象となる経費の支払い、契約、発注などを行ってはならない」というルールです。
もし、交付決定の通知を受け取る前にキャッシュレス決済機器を購入したり、サービスの契約をしたりしてしまうと、その費用は補助金の対象外となってしまいます。
申請から交付決定までには時間がかかりますが、焦って先に購入・契約しないよう、事務局からの正式な交付決定通知を待ってから事業に着手してください。
対象条件や範囲を確認しておく
補助金制度ごとに、対象となる事業者や経費、導入する機器・ITツールの種類など、細かな条件が定められています。
例えば、IT導入補助金のインボイス枠では、インボイス制度に対応した機能を持つソフトウェアの導入が必須であり、ハードウェア単体では対象外です。
小規模事業者持続化補助金では、販路開拓や業務効率化といった取り組みとセットでなければ、キャッシュレス決済端末の導入が対象とならないことがあります。観光・インバウンド向け補助金では、特定の地域や目的(観光客対応、災害対応など)に限定されていることがあります。
「対象に当てはまらない場合もある」ことを理解し、申請前に必ず公募要領を隅々まで確認し、自社の状況や導入内容が補助金の対象となる条件や範囲内に収まっているかを慎重に確認しておく必要があります。
少しでも不明な点があれば、必ず各補助金の事務局や相談窓口に問い合わせましょう。
書類の作成・事務処理は丁寧に
補助金の申請書類作成や、交付決定後の実績報告書類の作成、その他の事務処理は、煩雑で手間がかかります。
必要な書類が多く、記載内容も多岐にわたるため、正確性と丁寧さが求められます。
書類に不備があったり、記載内容が曖昧であったりすると、審査に時間がかかったり、不採択になったり、補助金の支給が遅れたりする原因となります。特に、実績報告における領収書や契約書などの証拠書類は、厳密に確認されるため、適切に保管しておく必要があります。
申請書類の作成に不安がある場合や、本業で忙しくて時間が取れない場合は、行政書士、中小企業診断士、民間のコンサルタントなど、補助金申請の専門家に代行やサポートを依頼することも有効な手段です。
専門家の支援を受けることで、書類の質を高め、採択率向上やスムーズな手続きが期待できます。
受給後にも継続的な使用や報告が必要な場合がある
補助金制度によっては、補助金を受けた機器やシステムを一定期間、補助金の目的に沿って継続的に使用することが義務付けられていることがあります。
また、事業実施期間だけでなく、その後の事業実施効果報告などが求められることもあります。
例えば、IT導入補助金では事業実施効果報告が必要です。
業務改善助成金でも、助成金受け取り後に状況報告や仕入控除税額報告書の提出をしてください。
補助金の交付を受けた後も、求められる報告義務や使用義務を怠らないよう気を付けましょう。
不正受給は絶対ダメ
補助金・助成金は公的な資金であり、不正な手段で受給することは厳しく罰せられます。
虚偽の申請を行ったり、補助事業を適切に実施しなかったり、実績報告で虚偽の報告をしたりするなどの不正行為は、補助金の返還を求められるだけでなく、罰金や刑事罰の対象となる可能性もあります。
補助金制度の利用にあたっては、常に誠実かつ正確な情報提供を心がけ、定められたルールを遵守するようにしてください。
キャッシュレス決済に関する補助金情報はどこで集める?相談先は?
キャッシュレス決済導入に活用できる補助金・助成金は多岐にわたり、その内容や公募状況は日々更新されています。
自社に最適な補助金を見つけ、適切に申請するためには、信頼できる情報源から最新情報を収集し、必要に応じて専門家や関係機関に相談しましょう。
ここでは、キャッシュレス決済に関する補助金情報を集める方法や、相談できる窓口をご紹介します。
- 補助金・助成金のポータルサイト
- 商工会・商工会議所
- IT導入支援事業者
- 地方自治体(市区町村、都道府県)
- 労働局・労働基準監督署
- 観光庁、DMO
- 経済産業省、中小機構
- 創業コンサルティングなど専門家
補助金・助成金のポータルサイト
国や自治体が提供する補助金・助成金の情報を集約して掲載しているポータルサイトがあります。
J-Net21
中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、中小企業のための経営情報サイトです。
補助金・助成金情報も掲載されており、制度を検索することができます。
その他民間の補助金情報サイト
創業手帳や補助金wayなど、補助金・助成金に特化した情報メディアも存在します。
これらのサイトでは、最新の公募情報や制度の解説、申請のコツなどが掲載されていることがあります。
ただし、情報が常に最新であるか、内容が正確であるかはご自身で確認する必要があります。
商工会・商工会議所
特に小規模事業者持続化補助金の申請を検討している場合は、地域の商工会または商工会議所が相談先となります。
商工会・商工会議所では、小規模事業者の経営計画策定に関する指導や助言を行っており、小規模事業者持続化補助金の申請に必要な「事業支援計画書」の交付を受けることができます。
補助金の活用について相談に乗ってくれる場合もあります。
IT導入支援事業者
IT導入補助金の申請を検討している場合は、IT導入支援事業者が必須のパートナーとなります。
IT導入支援事業者は、IT導入補助金の事務局に登録されたITベンダーやITベンダーサービス事業者であり、補助金の対象となるITツールの選定や、申請手続き、交付決定後の事業実施報告など、一連の手続きをサポートしてくれます。
IT導入補助金に関する疑問や不明点は、IT導入支援事業者に相談するのが最も効果的です。
地方自治体(市区町村、都道府県)
地方自治体が独自に実施しているキャッシュレス決済導入補助金を検討している場合は、事業所がある自治体の担当窓口に直接問い合わせるのが確実です。
各自治体のホームページで補助金制度の有無や詳細を確認できますが、不明な点や具体的な申請方法については、自治体の担当部署に電話や窓口で相談しましょう。
労働局・労働基準監督署
業務改善助成金の申請を検討している場合は、厚生労働省の都道府県労働局または労働基準監督署が窓口となります。
業務改善助成金は最低賃金の引き上げとセットの制度であるため、労働基準関連の専門部署が担当しています。
助成金の詳細、対象要件、申請書類などについて相談することができます。
観光庁、DMO
観光関連の補助金(インバウンド受入環境整備高度化事業、地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業、インバウンド安全・安心対策推進事業、国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業など)については、制度を所管する観光庁や、地域の観光地域づくり法人(DMO)が重要な情報源・相談先となります。
観光庁のホームページや、各補助金の事務局ホームページで最新の公募情報や詳細な要領を確認できます。
特定の地域での取り組みを支援する制度もあるため、対象地域のDMOに相談することで、地域の計画との連携や申請に関するアドバイスを受けられることがあります。
経済産業省、中小機構
IT導入補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金といった中小企業・小規模事業者向けの主要な補助金は、経済産業省や中小企業庁が所管し、中小企業基盤整備機構(中小機構)が関連しています。
これらの省庁・機構のホームページや、各補助金事務局のホームページで公式情報を確認できます。
一般的な制度概要や政策に関する問い合わせに対応している場合もありますが、個別の申請に関する具体的な相談は、多くの場合、各補助金の事務局やIT導入支援事業者、商工会・商工会議所などのパートナー団体を通じて行うことになります。
創業コンサルティングなど専門家
補助金申請の手続きは複雑で、書類作成に専門知識が必要な場合もあります。そのため、行政書士、中小企業診断士、税理士、民間のコンサルタントなど、補助金申請のサポートを専門とする専門家に相談・依頼することも有効です。
特に、事業計画書の作成支援、必要書類の準備サポート、申請手続きの代行、採択率を高めるためのアドバイスなど、幅広い支援を受けることができます。専門家に依頼することで費用はかかりますが、煩雑な手続きの負担を軽減し、採択の可能性を高めることが期待できます。
また、キャッシュレス決済サービスを提供している事業者の中には、IT導入補助金などの申請サポートを提供している場合もあります。
導入を検討している決済サービスの提供事業者に相談してみるのも良いでしょう。

